【ケース1.種類株式を活用した自社株対策事例】
問題点
・株主である経営者親族が高齢となり、将来の相続が心配であった
・自社株評価額が高額であったが、取引先等との関係から決算対策による自社株評価額の引き下げはしづらい状況にあった
解決策
・親族が保有する普通株式の一部を無議決権株式に転換し、自社株評価額を引き下げることができた
・親族に万が一の相続が起きても、多額の相続税が課される不安を解消できた
※1人あたり取得後の議決権比率を5%未満とすることがポイントです。相続人が複数いる場合に、取得後の議決権比率が5%未満となる場合では、無議決権化をしなくても高い評価額によらずに済みます。
【ケース2.法人所有の不動産売却によりキャッシュフローを改善し、同時に経営者の保有資産の評価額を大幅に圧縮できた事例】
問題点
・法人所有の事業用不動産に多額の含み損があった
・経営者は同族法人あてに多額の貸付金が存在(法人の業績は順調だが金融機関からの借入金も多く、キャッシュフローはひっ迫しており、回収が見込めない状況であった)
解決策
・法人は経営者に事業用不動産を売却(代金は経営者からの借入金一部と相殺)し、法人税等を減少させることでキャッシュフローを改善できた
・経営者は自社株評価額の引き下げと資産組み換えにより、保有資産の評価額を大幅に圧縮できた(土地については、相続時に小規模宅地等の特例を適用することを想定)
・経営者は保有する自社株式を後継者に贈与し、残る貸付金についても回収のめどがついたため子供達に贈与することができた
【ケース3.金庫株を活用した対策事例】
(1)グループ間の株式持合い解消のために金庫株を実施
問題点
・会社法上、相互保有株式(保有議決権割合25%以上)は議決権が制限されるため、今後の資本政策を検討する上で株主持合いを解消しておきたかった
(会社法上、保有する親会社株式は相当な時期に処分しなければならないこともその理由です)
解決策
・金庫株の実施により、税負担なくグループ間の株式持合いを解消できた
(子会社が持つ親会社株式を自己株取得する場合には、他株主への売主追加請求権は生じません)
(2)取引先からの株式買い取り要請に応ずるために金庫株を実施
問題点
・オーナー個人が買い取る場合には、過去の株式持合い経緯や税務面を考慮すると多額の資金調達が必要とされた(取引先の当初取得価額を考慮すると買取価額の引き下げは困難と予想された)
解決策
・発行法人の自己資金によって、取引先が保有する株式を購入することができた
(原則として他株主への売主追加請求権が生じます)
・取引先についても、税務上の譲渡益課税が50%非課税とされ、オーナー個人が買取った場合と比較して手取り額が増加するため、交渉をスムーズにすすめることができた
※発行法人が従業員持株会といった個人株主から金庫株を実施した場合には、残存株主であるオーナー個人に対し、みなし贈与課税のリスクが生ずる可能性があります。
【ケース4.持株会社を活用した対策事例】
(1)持株会社(を新設後)に自社株式を譲渡したケース
歴史のある会社では株主の相続などによって株主が分散していることがよくあります。
外部株主のご相続時などにオーナー個人が株式の買い取りを求められた場合、基本的にはオーナー個人の自己資金または自社から借入れをして株式を購入しますが、借入れをする場合、返済資金を多額の税負担のもと役員報酬や配当の増額によって捻出しなくてはならず、会社は業績好調な半面、オーナー個人は長期にわたり多額の資金負担を強いられることになります。
このオーナー個人が負う多額の資金負担の問題を解消するために、持株会社に自社株式を譲渡する方法が用いられることがあります。
持株会社に自社株式を譲渡する対策では、この代替わりに伴い生ずる資金調達上のメリットを活かしながら、その一方で持株会社の株式購入に伴う資金計画をどう立案するか、持株会社を事業戦略上どう位置づけるか、といったことがポイントです。
持株会社に自社株式を譲渡した場合のメリット
・税負担が20%で済むこと
・オーナー個人の借入が整理できること
・持株会社を通じて株式を保有することで、今後の自社株評価額の上昇を緩和できること
・(継がないご家族様に対する財産承継、生前の遺留分対策といった視点から)保有株式を資金化できること
など
(2)組織再編(株式交換、株式移転、現物出資等)により持株会社を設立したケース
株式評価上、組織再編後のグループ間の事業・資産組換えにより、持株会社が株式保有特定会社に該当しないこと、発行会社に営業権が計上されないようにすることがポイントです。
①株式移転の場合
②株式交換の場合
【ケース5.組織再編を活用した事例】
オーナーとグループ会社間の複雑化した不動産賃貸借や資金貸借等を見直すため、グループ会社を合併したケース
問題点
・資金収支の流れが複雑すぎて、各社の収支構造が見えづらいことが資金調達上のネックになっていた
・グループ会社のうち1社が赤字であるなか、オーナー個人で多額の税金を払っており、個人法人をグループ一体で見た場合に税務面での資金効率が最適ではなかった
解決策
・グループ会社を合併することによって、資金収支の流れを明確にでき、税負担も最適化できた